[読書]Michael Moorcock  Von bekとかElric Saga新3部作とか。

Von Bek (The Tale of the Eternal Champion)

Von Bek (The Tale of the Eternal Champion)

The Dreamthief's Daughter

The Dreamthief's Daughter

The Skrayling Tree (Aspect Fantasy)

The Skrayling Tree (Aspect Fantasy)

The White Wolf's Son

The White Wolf's Son

『The Warhound And The World's Pain』は『堕ちた天使』の原題です。
主人公Ulrich von Bekの聖杯探索の物語です。
序盤のUlrichとLuciferの取引から、聖杯探索まで緊張感があってとてもスリリングな展開が楽しめます。
この作品と続編『The City In The Autumn Stars』に登場するカソリック教徒Klosterheimは新3部作にも登場し、多元宇宙一気の毒な人Gaynor The Damnedと手を組んで悪巧み三昧です。
さて新3部作は、それぞれ独立してスタートし『タネローンを求めて』以降、徐々に接点を持ち始めていた『Eternal Champion』シリーズと『Von Bek』シリーズを完全に融合、その上で「多元宇宙」や「天秤」「Fate」といった作品の主題に新たな解釈を加えつつ全体を包括、といったところでしょうか。

第一部『The Dreamthief's Daughter: A Tale of the Albino』では、第二次大戦中のドイツを舞台に主人公Ulric Von BekとナチスのSS将校Gaynor Von Minct(とKlosterheim)のBek家の秘宝である魔剣Raven Blandと聖杯をめぐる戦いが展開され、そこに法の神と戦うElricと彼の実の娘であるOona The Dreamthief's Daughterも加わって、戦いの舞台はドイツのBekから『The City In The Autumn Stars』の舞台でもある地底都市Off-Moo、Mu-Ooriaへと場を移し、徐々に剣と聖杯の秘密に迫っていきます。
他の作品もですが、終盤はかなりテンション高く、物語の盛り上げ方は本当に上手いですね、完璧に引き込まれます。

第二部『The Skrayling Tree: The Albino in America』では、誘拐された夫Ulricを追って
Oona Von Bekがアメリカ原住民のへと旅立ち、やがて宇宙樹The Skrayling Treeを見出し天秤を再生させるまでの物語が描かれます。
もちろん、Elricも登場しますが、Elricが彼の世界にいながら(時間的には初期Elric Sagaのラスト付近にあたります)20世紀のアメリカに出現できる理由として、彼の最大魔術が登場しますが、これは若干無理があるというか都合が良すぎるような気がしないでもないです。
やっぱりラストは壮観です。

そして最後の『The White Wolf's Son』では、これまで存在がほのめかされていたOonaの双子の兄弟Elricの息子が登場します。ホームレスなんですけどね。
主人公のOonagh Von BekはUlricとOonaの孫娘にあたりますが、第一部にあるとおり血の繋がりは無く、要はなんでもないただの人です。しかも、12歳の女の子です。
物語は、OonaghがひたすらGaynorとKlosterheimに追い掛け回されて、しまいにはHawkmoonの世界である暗黒帝国にまで行ってしまいます。
この作品はこれまでの締めくくりにふさわしく、今までのほとんどの登場人物に加えてST.OdhranらVon Bekの登場人物、暗黒帝国の面々など懐かしい人達も登場して錚々たる顔ぶれです。また、初期の作品で重要な役割を果たしたストームブリンガーやルーンの杖なども新しく解釈されています。
しかし、小説全体の7割は12歳の少女を追いかけまわすGaynorとKlosterheimです。
読んでて若干きつくなりますね。
ラストはかなりきれいにまとまっています、がいつでも次が出せそうな感じでもあります。

久しぶりにムアコックを読みましたが、やはり凄い作家ですね。
まだ読んでいない作品もかなり多いので、しばらくはムアコック三昧になりそうです。
しかし、英語で本を読むのは疲れる。