エッサ・デ・ケイロース『縛り首の丘』

縛り首の丘 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

縛り首の丘 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

ポルトガルの作家。「縛り首の丘」と「大官を殺せ」の二篇が収録されている。
「大官を殺せ」は、遠い中国の大富豪を呼び鈴を押すだけで殺し、その財産を相続し手に入れた男の話。
この話自体は古い寓話としてあるらしい。
それを作者のユーモアと皮肉を交えて、独特の幻想小説に仕立て上げている。
寓話だけに教訓めいたお話ではあるが、説教臭さを全然感じなかったのは、幻想小説として
とても面白かったためだろう。
「縛り首の丘」は、恋慕した女性の旦那が仕掛けた罠とも知らず、その女性のもとに逢引しようと馬を駆る若い騎士が、道中出会った縛り首の死体を同伴していく、というお話。
これは、なんだか痛快だった。
実際は、聖女信仰とか内容は深いのだが。
やっぱりちょっと教訓めいているが、ユーモアと皮肉が効いていて、何よりも幻想小説としてとても面白い。
ちょっと強引な展開も全く違和感を感じなかった。
むしろ、つっこむヤツが野暮と思えてしまう。
なんか、作者の魔術に絡め取られた様だ・・・。
ま、いいか。