安部工房『人間そっくり』

人間そっくり (新潮文庫)

人間そっくり (新潮文庫)

今日は、津原泰水の『蘆屋家の崩壊』という本を買いに池袋まで行ったのだが、どこも売り切れだった。
仕方ないので、代わりに別な本を何冊か買ってきた。
これもその内の一冊。
安部工房はこれで3冊目になる。
前に読んだ二冊も面白かったが、この『人間そっくり』はそれらを凌いで面白い。
今のところ一番だ。
内容は、自らを火星人と称する男に振り回されていく内に、自分自身が何者か分からなくっていくというストーリーで、この「自分という存在がだんだん希薄になっていく」という感じは、ちょっとポール・オースターに似ている気がする。
また、この小説は構造が非常に独特だ。
寓話の中に寓話があり、その寓話の中にもまた寓話がある。
それらを内包しているのは現実であり、その現実はまた現実によって内包されている。
ということは、内包している現実もまた寓話なのではないか?
それとも、内包されている寓話が現実なのか?
とにかく、読んでいく内に何が何やら、どんどん迷走していく。
特に、後半の目まぐるしい展開は壮絶の一言に尽きる。
本当に凄い。面白かった。