[読書]H・R・ウェイクフィールド『赤い館』

赤い館 (魔法の本棚)

赤い館 (魔法の本棚)

英国の実力派怪奇作家ウェイクフィールドの短編集。
昔、アンソロジーで読んだ「防人」と「ダンカスターの十七番ホール」が面白かったのを憶えている。
ジェリダン・レ・ファニュやM・R・ジェイムズの怪奇小説のスタイルを受け継いだ作家であり、その作品は彼らと特にジェイムズと似ている。
とはいえ、似ているのは形式だけで中身は全くの別物。
決定的な違いは心霊現象に対する立場だろう。
それは、この本の頭と末尾に納められている二篇のエッセイを読めばよくわかるだろう。
ウェイクフィールドは心霊現象や魔術を信じていたし、実際に体験もしたようだ。
その体験が基になっているのが表題作「赤い館」であり、その真に迫った文章はやはり実地に体験しなければ書けないものだろう。
それくらいに臨場感のある傑作である。
また「“彼の物現れて後去るべし”」はジェイムズの「呪いを掛ける」のウェイクフィールド版といった感じの作品。
心霊現象に対する両者の捉え方の差異が明確に表れているので読み比べてみると良いだろう。
そして、この短編集の一番の傑作は「ゴースト・ハント」
ラジオの生放送で幽霊屋敷に突撃レポートするという一風変わった内容の作品で、短い作品ながら凄まじい臨場感を誇っている。
この作品は読んでると本気で来る。
どの作品も安定した面白さを持っているがこれだけは別格で、ぶち切れてる。
ただ、残念なのは「湿ったシーツ」が入っていなかったこと。
この作品を読んでみたいが、収録されている短編集が絶版。
他に読みたい作品「目隠し遊び」と「チャレルの谷」はまだ普通に手に入るようなので読んでみたい。