[読書]リチャード・ミドルトン『幽霊船』

幽霊船(魔法の本棚)

幽霊船(魔法の本棚)

リチャード・ミドルトンはかなり前から知っていた作家。
アンソロジーで「ブライトン街道で」や「棺桶屋」などの短編を読んで好きになった。
その頃からミドルトンを怪奇作家だと思っていたが、それは間違いだった。
彼は詩人だった。そして、悲運な天才だった。
表題作の「幽霊船」「ブライトン街道で」は素晴らしい作品だ。
怪奇小説の形式で、ユーモラスで皮肉で少し寂寥感を漂わせる。
短い作品だが、流れるような筆致で印象深い。
だが、それにも増して「詩人の寓話」「高貴の血脈」「警官の魂」は素晴らしい。
怪奇小説の作品よりもずっと皮肉が強く滲んでいるが、その寂寥感と諦観は皮肉を遥かに通り越して嘆きにすら感じられる。
ミドルトンの文章は詩人の言葉、そこには魔力が秘められている。