ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)

うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫)

今日も、凄い本に出会った。
「現代でもっとも悲痛な恋愛小説」という謳い文句の通り、ストーリーは哀切そのもの。
徐々に破滅を漂わせていく物語は、本当に悲しいが、同時に純粋で儚く、そして美しくもある。
そんな物語のあちこちには、不思議な小道具とエピソードがふんだんに散りばめられている。例えば、弾いた曲に応じてカクテルを作り出すカクテルピアノや、パイナップル味の歯磨き粉を餌にして、蛇口から鰻を釣るエピソードなどと挙げていけば切りがない。
悲痛な物語だったが読み終わった後も、嫌な味が全く残らないのは、全体を貫いて作者の純粋さと不思議な遊びが感じられるからだろう。