[読書」マルセル・ベアリュ『水蜘蛛』

水蜘蛛 (白水Uブックス)

水蜘蛛 (白水Uブックス)

めくるめく変化と漂う幻想を味合わせてくれる逸品。
世界をどんどん狭めていくことで現実を深く掘っていく。
ところが掘り進んでいってみれば、そこは元居た世界とはかけ離れてしまう。
現実と幻想が織り成す世界の変化の中で、ものの価値もまた変わる。
美しいものは醜くなり、大切なものは無価値に変わる。その逆もまた然り。
しかし、彼はどこにいたのだろうか?幻想から現実に引き戻されたのか?それとも、現実から幻想の世界に引きずり込まれていったのか?
水蜘蛛の歌声は美しい。
しかし、その世界は美しいというにはあまりに背徳的だ。