[読書]A・E・コッパード『郵便局と蛇』

郵便局と蛇 (魔法の本棚)

郵便局と蛇 (魔法の本棚)

久しぶりに娯楽用の本を読んだ。
ずっと前から、この作家A・E・コッパードは好きだったが、怪奇小説作家だと思っていた。
それは初めて読んだのが「消えちゃった」という何かの怪奇のアンソロジーに収録されていた作品だったからだろう。
とはいえ、「消えちゃった」自体も怪奇小説なのか?と考え直してみると、そう断定はできないかもしれない。
とにかく、あまりにも奇妙な話だった。
そして面白かった。
今この短編集を読んでみてはっきりと分かることは、コッパードは怪奇作家というわけではないということ。
というかそもそも、〜作家とか〜系とかで括ることのできる作家ではないということ。
そして、ブッちぎりで面白い作家だということ。
確かに、作品によっては怪奇なものも、幻想的なものもある。
しかし、それもやはり独特なもので、もうコッパードとしか言いようがない。
そこにはコッパードしか書けない、コッパードだけの世界がある。
「銀のサーカス」は有名な作品だが、実際読んでみると本当に凄い作品だ。
表題作はとてもとても不思議な作品。
他のどの作品も面白いが、特に好きなのは「若く美しい柳」と「ポリー・モーガン」の二篇。
「ポリー・モーガン」は怪奇小説と言ってもいい内容だが、これが絶品。
極上の怪奇小説という位置づけで納得できるだろう。
そして、「若く美しい柳」
これほど詩的で美しく哀切な作品が他にあるだろうか。
虚無や諦観を感じさせる部分もあるが、それすら美しく思える。
この作品の素晴らしは一生忘れられないかも。